唱歌「朧月夜」
朧月夜は、文部省の『尋常小学校唱歌第六学年用』に掲載されました。大正3年のことです。
朧月夜については、池田小百合さんがまとめられた『池田小百合なっとく童謡・唱歌』に詳細に記載されています。特に一番、二番の歌詞の意味は参考になります。今では難解な言葉なので、歌詞の意味を知って情景をイメージするのに役立ててほしいと思います。下記に引用します。
http://www.ne.jp/asahi/sayuri/home/doyobook/doyo00okano.htm
一番は、春風が小さい花びらを揺らす一面の菜の花畑。その向うに太陽が沈み、春霞がかかった空には月があり、黄色の菜の花畑は、ほんのりと明るい。
二番は、さらに時が進み、「里わの火影」のように見えるものだけでなく、「蛙のなくね」など耳でとらえたもの、そして五回出てくる「・・・も」で列挙されるすべてのものが霞んでいる、のどかな春の宵の情景です。
これは、かつて全国どこにでもあった風景です。しかし、歌を口ずさめば、だれでも心の中に静かで幻想的な菜の花畑が広がります。それは、いつかどこかで見た事があるような思いを抱かせますと記載されています。
【歌詞について】
・「入日薄れ」夕日の光がうすくなって。
・「山の端」山が空に接する部分のこと。輪郭。
・「夕月かゝりて にほひ淡し」夕方の月が空に出ていて、ほんのりと明るい。「にほひ」は古典では視覚に関する語、目に立つ色合い。
・「里わの火影」里の辺りの明かり。「里わ」は古語の里曲・里回(さとみ)が誤読された言葉。
・「たどる」歩いて行く。
・「蛙のなくね」蛙が鳴く声。
・「さながら」のこらず、すべて。
・「朧月夜」ぼんやりとかすんで見える春の月。また、その月の出ている夜です。
菜の花